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書籍・雑誌

日本の国宝、最初はこんな色だった(小林泰三著) 

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 「日本の国宝、最初はこんな色だった」(2008 光文社新書)

遺跡発掘や、博物館の展示を見るのが大好きです。
「昔ここに人が住んでたんだなぁ」とか、「これを使って生活してたんだなぁ」と思うと、ワクワクします。
そんなわけで、図書館でこの本を見かけたとき、面白そうだなぁと思いました。

この本で取り上げられている東大寺の大仏殿や、地獄草紙、花下遊楽図屏風などは、何百年、千年以上昔のものですから、現在は褪色したり、一部剥落したりしてます。
それを私たちは博物館などで、「むむ、あの色の渋みがいい!」と思って観賞しています。

復元作業は、ゴミや剥落を補うのはもちろん、作品にほんの一部残されている色を突き止めたり、当時の色の配色規則を元に色を決めたり、同時期の美術品を研究したり、専門家に聞きながら行っています。
作者は「美術刑事」として、聞き込みをして考え抜き、逮捕(完成)していくのですが、その過程がまた面白い。

そして、過程を知った上で見る完成品はすごく色鮮やかで、元の状態とはまったく違う!
東大寺大仏殿なんて、極彩色が華やかで別物です。

さらに、作者はその完成品データを使って、当時の人がこう見ていたに違いないという位置を探っていきます。
屏風などは対にしてみたり、屏風仕立てな絵を本来の襖絵仕立てになおしたり、巻物の軍紀物の流れなどを紹介したりと、飾り物ではなくて日常使う中でどう見えるかを探っていきます。
そうすると、その作品の持つ迫力が、さらに迫ってくるようです。

作者はその美術品で「何が描かれているかではなくて、何が見えてくるか」を意図してデジタル復元するそうです。
博物館で見るのとは違う観賞法で、美術品の本当の魅力はこうなんじゃないかと思える面白い一冊だと思います。